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東京地方裁判所 平成3年(ワ)10566号 判決 1993年2月10日

原告

株式会社三菱銀行

右代表者代表取締役

若井恒雄

右訴訟代理人弁護士

小野孝男

右訴訟復代理人弁護士

庄司克也

近藤基

芳村則起

被告

清水彰治

右訴訟代理人弁護士

林勝彦

主文

一  被告は、原告に対し、金四六一八万四九六八円及び内金四六一八万四八九九円に対する平成三年七月一二日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、平成元年一二月二五日、訴外清水物産株式会社(以下「訴外清水物産」という。)に対し、次の約定で金三億円を貸し付けた(以下「本件金銭消費貸借」という。)。

(一) 弁済期

元本は、平成六年一二月二五日。

利息は、毎月末日限り、翌月分を前払い。

(二) 利息 年6.8パーセント

(三) 損害金 年一四パーセント

(四) 特約 支払を停止したときは、当然に期限の利益を喪失し、直ちに残額全部を支払う。

2  被告は、右同日、原告に対し、前項の本件金銭消費貸借契約により訴外清水物産が原告に対して負担する債務の支払を連帯して保証することを約した(以下「本件保証契約」という。)。

3  訴外清水物産は、平成三年三月三一日までに支払うべき同年四月分の利息の支払を怠り、同年四月一日に期限の利益を喪失した。

4  その後、原告は、訴外清水物産から、次の弁済を受けた。

(一) 原告は、本件金銭消費貸借契約の締結に際して、訴外清水物産から、同社の訴外第百生命保険相互会社(以下「訴外第百生命」という。)に対する一時払変額保険に基づく死亡保険金請求権等につき、質権の設定を受けていた。

(二) 原告は、訴外清水物産が期限の利益を喪失した後の平成三年七月五日右質権を実行し、これにより取得した金二億六四七四万六六〇七円を、期限の利益を喪失した日の翌日である同年四月二日から右質権実行日である同年七月五日までの遅延損害金一〇九三万一五〇六円及び元本の一部である金二億五三八一万五一〇一円の支払に充当したので、右七月五日現在の残元本債権額は、金四六一八万四八九九円である(以下「残元金」という。)。

(三) 原告は、平成三年七月二四日、右残元金に対する同月六日から同月一一日までの遅延損害金一〇万六二八八円の請求権の一部を自働債権とし、訴外清水物産の原告に対する預金残高一〇万六二一九円の払戻請求権を受働債権として、対等額で相殺する旨の意思を表示し、この意思表示は、同月二七日に訴外清水物産に到達した。

(四) その結果、右残元金に対する平成三年七月六日から同月一一日までの未払遅延損害金の残金は、金六九円である。

5  よって、原告は、被告に対し、前記1及び2記載の本件保証契約に基づき、訴外清水物産の原告に対する残元本債務金四六一八万四八九九円及びこれに対する平成三年七月六日から同月一一日までの未払遅延損害金の残金六九円の合計金四六一八万四九六八円並びに右残元金に対する一部弁済の日の翌日である平成三年七月一二日から支払済みまで約定の年一四パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因事実は、すべて認める。

三  抗弁

1  詐欺

(一) 訴外清水物産が原告から請求原因1記載の金員を借り入れたのは、訴外第百生命との間で締結した一時払変額保険(以下「本件変額保険」という。)の保険料を支払うためである。

(二) 訴外清水物産が本件変額保険への加入を決意したのは、訴外第百生命中央支社の浦野支社長、同支社日比谷支部の金澄職員、同社日本橋営業所の門澤所長などが、訴外清水物産の社長である被告及び同社の副社長であった訴外渋谷友良(以下「訴外渋谷」という。)に対し、運用利回表(<書証番号略>)を示しながら、「本件変額保険の運用利回りは、最低でも年九パーセントは固く、良ければ年一五パーセントにもなるから、銀行融資を受けて加入しても絶対に損はない。契約締結後一年以上経過した後に解約すれば、受取額は払込保険料の額を下回ることはない。」などと断定的判断を示して同人らを欺き、その旨誤信させたからである。

(三) 金融機関である原告の職員は、変額保険契約の解約により貸金元金割れのおそれもあることを訴外清水物産側(被告や訴外渋谷)に告げ、その危険性を認識させた上で本件融資を実行すべき義務があったにもかからわず、前記第百生命の欺罔行為に乗じて自己の利益を達成しようとして、物的担保をとることなく、被告の個人保証のみで訴外清水物産に対して本件融資を簡単に了解した。

(四) 被告は、原告のこのような態度も兼ね合わせて、本件金銭消費貸借により本件変額保険の一時払保険料を借り入れても損をしないと信じ込み、訴外清水物産をして本件金銭消費貸借契約を締結させ、自らも本件保証契約を締結したものであるから、原告は、訴外第百生命と一体となって被告を欺罔したと言える。

(五) 被告は、原告に対し、平成四年二月三日の第四回口頭弁論期日に、本件保証契約を取り消す旨の意思表示をした。

2  錯誤

(一) 被告は、本件保証契約の締結に際し、本件変額保険は締結後一年以上経過した後に解約すれば、その受取額が払込保険料の額を絶対に下回ることはないと信じていた。

(二) 被告は、契約締結から一年以上経過した後に本件変額保険を解約した場合にその受取額が払込保険料の額を下回る恐れがあることを知っていたならば、本件保証契約を締結しなかった。

(三) 被告は、本件保証契約締結の際、原告に対し、被告が右(一)を信じて本件保証契約に締結することを表示した。

(四) したがって、本件保証契約は、要素の錯誤により無効である。

3  公序良俗違反

(一) 抗弁1の(二)に記載のとおり、訴外第百生命の担当者は、訴外清水物産の関係者に対して、銀行融資を受けて加入しても絶対に損はないなどと断定的判断を示して違法な勧誘をした(保険募集の取締に関する法律一五条二項、一六条一項一号等)。

(二) 被告及び訴外渋谷は、右(一)の訴外第百生命勧誘員の言辞などを信じ、本件金銭消費貸借契約の申込をするに当り、原告の担当者に対して、右運用利回表を示した上、右(一)の説明をそのまま話して、本件変額保険の一時払保険料を支払うための借入であることを説明した。

(三) 原告は金融機関であり、その担当者は、右(一)の訴外第百生命勧誘員の勧誘行為が違法なものであることを知ったのであるから、これに加担してはならない義務がある。違法な勧誘行為によって締結された保険契約による保険料の支払のためになされた原告の訴外清水物産に対する資金融資行為は、右違法勧誘行為を助長、幇助する違法なもので、公序良俗違反行為に該当し、無効である。

(四) したがって、右の無効行為を前提としてなされた原告と被告間の本件保証契約も違法な行為であり、公序良俗違反として無効である。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1(詐欺)について

(一) 抗弁1の(一)の事実は、認める。

(二) 抗弁1の(二)の事実のうち、被告が訴外清水物産の社長であること及び訴外渋谷が同社の副社長であったことは認めるが、その余の事実は、不知。

(三) 抗弁1の(三)の事実のうち、原告が訴外清水物産に対して物的担保をとることなく、被告の個人連帯保証のみで本件融資を行なったことは認めるが、説明義務などその余の点は、否認する。

(四) 抗弁1の(四)の事実のうち、原告と訴外清水物産が本件金銭消費貸借契約を、原告と被告が本件保証契約を、それぞれ締結したことは認めるが、その余は、不知ないし否認する。

(五) 抗弁1の(五)の事実は、認める。

2  抗弁2(錯誤)について

(一) 抗弁2の(一)及び(二)の事実は、いずれも不知。

(二) 抗弁2の(三)の事実は、否認する。

(三) 抗弁2の(四)は、争う。

3  抗弁3(公序良俗違反)について

(一) 抗弁3の(一)の事実のうち、被告が訴外清水物産の社長であること及び訴外渋谷が同社の副社長であったことは認めるが、その余の事実は不知。

(二) 抗弁3の(二)の事実のうち、被告及び訴外渋谷が、本件金銭消費貸借契約の申込に当り、原告の担当者に対して右運用利回表を示したこと、本件借入が本件変額保険の一時払保険料を支払うための借入であることは認めるが、その余の事実は、否認する。

(三) 抗弁3の(三)の事実のうち、原告が金融機関であることは認めるが、その余の点は、争う。

(四) 抗弁3の(四)は、争う。

第三  証拠<省略>

理由

一請求原因について

請求原因事実(訴外清水物産が原告から金三億円を借り受け、被告がこの債務を連帯保証したこと、訴外清水物産が約定の利息の支払を怠り期限の利益を喪失したこと、その後、原告が、訴外清水物産に対する質権を実行すると共にその預金と相殺し、計算上、訴外清水物産の原告に対する残債務は請求の趣旨記載のとおりであること)は、すべて当事者間に争いがない。以下、抗弁について判断する。

二抗弁1(詐欺)について

1  被告の社長は、要するに、リスクを伴なう変額保険のために資金を融資しようとする原告は、融資を受けようとしている訴外清水物産やその連帯保証人になろうとしている被告に対して、事前にその危険性を十分説明すべき法的義務があったのに、これを怠り、訴外清水物産や被告に対して損害を与えたから、訴外第百生命と一体となって被告を欺罔したものというべきである、ということである。

2  そこで、判断するに、<書証番号略>並びに証人西武弘、証人谷端茂及び証人渋谷友良の各証言(<書証番号略>、渋谷証言については、一部措信しない部分を除く。)によれば、次の事実が認められる。

(一)  被告が社長をしている訴外清水物産は、平成元年一〇月頃、訴外第百生命から本件変額保険の勧誘を受け、その一時払保険を支払うための資金を金融機関から調達して加入することを決定し、当時取引のあった訴外富士銀行と交渉していたが、たまたま原告立川支店の西武弘支店長(以下「西支店長」という。)が得意先への挨拶回りで訴外清水物産を訪れたので、同社の副社長であった訴外渋谷が、西支店長に対して、本件融資が可能かどうかを打診した。

(二)  そこで、西支店長は、部下の谷端茂課長代理(以下「谷端課長代理」という)に検討を指示し、谷端課長代理と訴外渋谷との間で協議がなされた結果、当時、訴外清水物産がパチンコ店やガソリン・スタンドを複数経営しているだけではなく、ゴルフ場の開発にも乗り出すなど、順調な事業展開で十分な返済能力があるものと判断されたことや、訴外清水物産のオーナー社長で、地元では資産家として通っている被告が本件金銭消費貸借契約につき個人で保証すること、また、融資資金の運用先である変額保険も、株価の継続的な上昇傾向に支えられて高利回りを期待できる状況にあり、これに質権を設定できることなどの条件が満たされたため、原告は、平成元年一二月二五日、訴外清水物産に対し、年6.8パーセントの金利で金三億円を融資することとして本件金銭消費貸借契約を締結すると共に、被告との間で本件保証契約を締結した。

(三)  右融資の実行に際しては、手続上の処理のため原告の担当者と訴外第百生命の担当者とが同席したが、原告がこれに関与した時点では、既に訴外清水物産が本件変額保険に加入することが決定されていたため、特に原告と訴外第百生命が一体となって訴外清水物産や被告や訴外渋谷に対して本件変額保険への加入を説得したことはない。

(四)  また、訴外清水物産が加入したいわゆる「変額保険」は、一般的にハイ・リスク、ハイ・リターン商品であると言われており、本件当時は、株価が継続的な上昇基調にあって運用実績が順調であったため、いわゆる高金利商品の一つとして有利な投資方法である側面が世間の注目を集めていたが、この変額保険が株価の値動きなどによってはリスクを伴なう商品であることは、テレビや新聞や雑誌などでも広く取り上げられていた。

3 右に認定したところによれば、本件金銭消費貸借契約の話は、そもそも訴外清水物産側が原告側に持ちかけたもので、原告が本件融資の可否を検討し始めた時には、被告を含む訴外清水物産側は、融資を受けた資金を本件変額保険の一時払保険料として運用することを既に決定していたことが認められるのであって、原告が訴外第百生命と共謀して訴外清水物産を本件変額保険に加入させ本件消費貸借契約を締結させたり、被告に本件保証契約を締結させたものではないこと、しかも、被告や訴外渋谷は、それぞれ訴外清水物産の社長や副社長として、それまでに様々な経済活動に従事した経験を有する者で、年令的にも社会的にも、その判断能力は一般の人に優ることはあっても劣ることはないと考えられること、また、当時、一般的に、このような変額保険に加入して資金を運用することも有利な投資方法の一つであると考えられていたものの、株価の値動き次第では払込保険料に見合う利益が得られないなどリスクが伴なうものであることは広く世間に知られていたことが認められるから、このような本件の事実関係の下では、原告(その担当者)が訴外清水物産や被告に対して同人らが融資を受けた資金を投資しようとしている変額保険の内在的リスクについてまで改めて説明すべき法的義務を負うことはないというべきであり、原告が訴外第百生命と一体となって被告を欺罔したということもできないから、この点に関する被告の主張は理由がない。

三抗弁2(錯誤)について

1  次に、錯誤についてであるが、被告の主張するところは、要するに、訴外清水物産として原告から融資を受け、これを訴外第百生命の本件変額保険の一時払保険料として運用すれば損をすることはなく、右訴外清水物産と原告間の本件金銭消費貸借契約による債務を連帯保証したとしても、被告が実際に連帯保証人としての責任を問われることはないと考えてこれを保証したもので、原告にもその趣旨はよく分かっていたはずであるから、被告は、原告に対して、錯誤無効を主張できるというもののようである。もちろん、多くの場合において、保証人となる者は、現実にその保証人としての法的責任を追及されることはないであろうと考えて保証人になることを承諾するのであろうと推測される。

2  しかし、そのような理由で保証人が保証人としての法的責任を免れるものでないことも明らかである。そもそも保証契約は、万一、主たる債務者が何らかの事情でその債務を弁済することができなくなった場合に、保証人がその履行を補完することを目的としてなされるものであるから、保証契約であること自体を全く理解していなかったような場合はともかく、ただ実際に保証人としての責任を追及されることはないであろうと期待していたにすぎない場合は、仮に、債権者に対してそのような保証人としての期待を表示していた場合であっても、民法九五条の錯誤に当らないと考えられるからである。

3 しかも、当時の変額保険は、前記二で認定したとおり、株価が継続的な上昇基調にあって運用実績が順調であったため、いわゆる高金利商品の一つとして有利な投資方法であるという側面が世間の注目を集めていたものの、株価の値動きなどによってはリスクを伴なうものであることも広く一般に周知されていたところである。もちろん、原告は、そのようなリスクがあると考えていたからこそ、十分な資力を有すると思われた被告の個人保証を求めたと考えられる。そして、同様に、被告は、訴外清水物産のオーナー社長として積極的な事業活動を展開しており、その経済的な判断能力は人並以上に優れていたと考えられるのであってこのような被告であればこそ、自ら経営する会社の名義で三億円もの莫大な保険料の支払を要する本件変額保険に加入し、その資金を原告から借り入れ、これを個人保証することができたのであろうから、その被告が投資対象である本件変額保険の得失について全く理解していなかったなどということは、到底措信することができない(そもそも一般の者がこのような高額の変額保険に加入したり連帯保証したりすることはない。)。

4  したがって、右に認定、説示したところを総合勘案すれば、被告の誤信の主張が何ら理由のないものであることが明らかである。

四抗弁3(公序良俗違反)について

1  さらに、被告は、訴外第百生命と訴外清水物産との間の本件変額保険契約は、訴外第百生命の違法な勧誘、つまり、絶対に損はないとの断定的な勧誘によって締結された違法なものであるところ、本件金銭消費貸借契約及び本件保証契約は、このような違法な勧誘行為がなされたことを知りつつなされたもので、これを助長・幇助するものであるから、公序良俗に違反する無効な行為であると主張している。

2  しかしながら、本件変額保険自体は、前記認定のとおり、株価の高騰やマネー・ゲームを背景に誕生した保険で、払込まれた保険料の一部が株式や有価証券などに投資されることから、本来の保険としての機能だけではなく、投機的側面をも併有する特殊な保険で、解約返戻金等の額が払込保険料の額を下回る可能性があるなどのリスクを伴なうものではあるが、現在のわが国の社会的・経済的な倫理秩序に照らして到底容認することができないものとまではいえない。もちろん、本件記録を精査するも、訴外第百生命が被告や訴外渋谷に対して、強迫的に勧誘したことなどを窺わせる証拠もない。

しかも、被告は、訴外渋谷などが原告の担当者(西支店長や谷端課長代理)に対して訴外第百生命から受領した運用利回表(<書証番号略>)を示した上で損はないとの訴外第百生命の勧誘内容を説明したのであるから、西支店長や谷端課長代理は訴外第百生命の勧誘行為が違法なものであったことを理解していたはずだと主張しているが、西支店長や谷端課長代理は、訴外第百生命が被告や訴外渋谷に対して本件変額保険の内容等を説明して勧誘した際に立ち会っていたわけではなく、その具体的な勧誘形態や内容を直接知っていたわけではないし、また、訴外渋谷からの間接的な説明だけで訴外第百生命の勧誘行為が違法なものであるかどうかを判断できるものでもない(仮に、訴外渋谷の説明だけで訴外第百生命の勧誘行為が違法なものであると容易に判断できるのであれば、そもそも経営者として十分な判断能力を有していたであろう被告や当の訴外渋谷自身が何故そのことを判断できなかったのであろうか。)。

3  しかして、前記認定のとおり、原告は、訴外清水物産が本件変額保険への加入を決意した後に本件融資を申し込まれたのであるが、そもそも変額保険のための融資自体が法で禁止されているわけではなく、また、被告や訴外渋谷は当時手広く事業を営んでいた訴外清水物産の経営者として優れた判断能力を備えているものと考えられていたのであるから、原告の担当者らは、本件変額保険に加入するという顧客の訴外清水物産や被告の判断を最大限尊重した上、自らの貸金回収のために訴外清水物産や被告の資産や返済能力を把握して融資の可否を決定すれば足りるのであって、訴外清水物産(実際には被告や訴外渋谷)が本件変額保険への加入を決意した理由や、それまでの訴外第百生命との具体的な交渉経過などを熟知する必要はなく、無論のこと、その当否を検討して被告や訴外清水物産に警告しなければならない義務もないというべきである。

4  したがって、原告と訴外清水物産との本件金銭消費貸借契約や、原告と被告との本件保証契約が、いずれも公序良俗に反して無効なものであるとする被告の主張は、何ら理由がない。

結局、本件で被告が主張しているところは、バブル経済に浮かれて失敗した自分の判断の甘さを何とか他人に転嫁しようとするものであり、極めて非常識なものというほかはない。

五以上の次第で、被告の抗弁はいずれも失当であり、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官須藤典明)

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